筋膜はカラダを包むすべての膜で
筋肉、神経、血管、内臓など様々な組織を包んでそれらを支え、形を与え、つないでいます。
また豊富にある固有受容器や神経ネットワークを通じて様々な身体の情報のやりとりや調整にも重要な役割をしています。
筋膜という言葉には、
はっきりとした決まりはありませんが
筋肉を包む膜を示す場合に筋筋膜(myofascia)と表現されたりもします。
筋膜は感受性が強い
筋膜は筋肉の約6倍の感覚神経受容体を持つとも言われています 。
痛みの多くは筋肉ではなく、筋膜で感じていることが多いです。
今までは筋肉の痛みだと思っていたものが実は筋膜に問題があることが分かってきて痛みの治療法も日々変わってきています。
また、痛みだけでなく、振動や圧迫、伸長など多くの感覚を筋膜で感じています。
筋膜はがしやリリースという言葉から筋膜をべりべりはがしたり、組織を溶かしたりなどの間違ったイメージが伝えられていることもあります。
基本的に筋膜のコラーゲン繊維は手の力くらいでは構造は変えられないし、はがれないし、溶けることもないです。
施術による筋膜の変化は主に神経系のものだと考えられます。
筋膜には固有受容器が多く存在するので
様々な方法で筋膜に与えた刺激が神経を通じて
筋膜の高密度化や過度の緊張などを改善させていると考えられます。
筋やfascia(筋膜)にアプローチすることにより、通常のマッサージやストレッチでとることができなかった凝り、痛み、自律神経のアンバランスなどが改善していきます。
そして、それは心の癒しやエネルギーの充足にもつながることがあります。
神経、筋や筋膜が本来の正常な状態にもどることで姿勢が改善してきたり、
内臓の働きがよくなったり、深いリラックス効果を感じることもあります。
しかし、構造を変える方法もあります。
筋膜の性質には、粘性、弾性、塑性、リモデリングがあり、それらの性質に対して圧や伸長ストレス、弾性ストレスなどを繰り返し長期にわたって加え続けることによって徐々に組織を変えていくことができます。
本来、筋膜は水分豊富でみずみずしく、とても柔軟性があり、生きている筋膜同士は滑らかに滑ります。
トレーニングや運動によって筋膜に刺激を加え続けると
構造自体が変わっていくと考えられます。
現代の生活習慣はどんどん身体を使わなくなっています。
普段使っていない部分は組織の可動性が悪くなって癒着が起きたり、組織が高密度化して動きにくい身体になっています。
筋も血管も臓器もすべて筋膜に覆われているので、筋膜間のすべりが悪くなっていると様々な臓器や組織に影響がでることもあります。
今の身体の状態は、毎日の私たちの動きに適応して作り上げられたものです。
今の身体の状態がもし心地よい状態でないのだとしたら、動きのパターンを改善する必要があります。
組織を圧迫したり、伸ばしたり、弾むような動きをすることによって筋膜も今までと違った柔軟性のある状態や強い組織に生まれかわっていきます。
筋膜は全身つながっているThe fascia is connected throughout the body
筋膜は全身をひとつなぎにつないでいます。
人はひとつの受精卵から細胞分裂を繰り返し今の身体をつくっています。
膜によって身体はすべてつながっています。
ロボットのようにパーツを集めて人間の身体は作られているわけではありません。
筋や様々な組織はそれぞれ分かれていても筋膜同士がつながりあっているので、
どこかを痛めたり、硬くなったときには痛い場所と違う場所に影響を受けることが多々あります。
首に痛みがあったとしても、首だけに問題があるということはまれです。
気づいていないだけで身体にはいろんな緊張や歪みや動きのくせがあって
その結果バランスがとれなくなって首の痛みがでます。それは腰でも肩でもどこでも同じです。
首の凝りや痛みは股関節や腕、手に問題があることも多いですし、背中や脚、股関節などに問題があることも多いです。
症状があるとこだけみていても身体はよくなりません。
痛みや凝りなど辛い部分にアプローチしながらも、
原因になっている場所を施術しひとつひとつ解決していくことで身体は本当に楽になっていきます。
身体をスムーズに動かすには
ヒアルロン酸など膜どうしの間にある潤滑駅を正常な状態にして、膜のすべりをよくしてあげることです。
あとは、細胞外基質のゲル化を解消して筋膜の伸縮性を取り戻すことや、筋肉、筋膜の交感神経興奮状態などによる異常な筋収縮を抑え、神経が正常に働く状態(きちんと筋肉、筋膜が緩む)をつくってあげることです。
これらを達成するのためには「神経筋の調整」「組織への水分補給」「温度を高める」「動き」などの要素をコントロールする必要があります。
体温、筋温があがれば、潤滑液であるヒアルロン酸の温度が上がり潤滑機能が高まります。お風呂上がりに体の柔軟性が増すのはこのためです。運動前に体をあたためる・ウォーミングアップの目的も同じです。
温泉後にストレッチを施術するとすごく効果が高くなるのもこのためです。
筋膜をリリースする具体的な方法とは
「ストレッチ」
「皮膚を刺激する」
「腕や肘、手で筋筋膜に圧をかけたり、振動させたり、こすったりなどの刺激を加える」「器具でこする」
「フォームローラー」
「鍼治療」
「注射で生理食塩水の注ガン」
「筋膜リリースガン」
などいろいろあります。
筋膜リリースのテクニックもありますし、
違う施術法の結果として筋膜リリースがおこる場合もあります。
どれが正しい筋膜リリースなのかということではなく、
どの方法も一定の効果があるのではないしょうか。
上記の方法の中には浅筋膜に主に働きかけるもの、
深筋膜に働きかけるもの、
機械受容器に働きかけるもの、
物理的な水分補給などいろんな作用を通じて筋膜リリースを行おうとしています。
筋膜リリースとひとくくりにされますが、
アプローチする場所や作用や目的も少しずつ違ったりします。
実は普通のストレッチやラジオ体操も筋膜はストレッチはされているし、
ヨガも自分でできる筋膜リリースと表現されたりすることがあります。
指圧やマッサージでもやり方によっては筋膜リリースは含まれていますし、
どんな運動でも筋膜は使われています。
最近になって筋膜の役割や機能が医学的にどんどんわかってきて注目を浴びているだけであって、筋膜リリースそのものは実はいろんな形で昔から存在します。
東洋医学では鍼治療などにおいて筋膜に対する施術がされてきましたし、西洋医学でもロルフィングなどで筋膜へのアプローチはされてきました。東南アジアでもタイ古式マッサージなどで古くから筋膜へのアプローチを行われてきています。
そして、知ってもらいたいのが筋膜リリースをすれば肩こりや腰痛などがすべてが解決するわけではありません。
テレビや雑誌では、筋膜リリースですべて解決みたいな夢のような話をしたりしますが、
筋膜リリースはたくさんある身体へのアプローチ法のひとつに過ぎません。
身体は筋膜だけで構成されているわけでもないからです。
ただ、筋膜に対するアプローチで劇的に身体はよくなることはもちろんあります。
今まで何をやっても変わらなかったのに筋膜にアプローチして身体はすごく変わっていく姿を数えきれないくらい実際目にしてます。
様々な方法でそれぞれよくなっていく姿をみているので、
いろんなやり方があっていいのではないかと思います。
上に書いた通り筋膜リリースもいろんな方法がありますから、
その人に合った方法、合わない方法があります。
どこかで筋膜リリースを受けて合わなかったからといって
他のすべての筋膜リリースが合わないわけでもないので
色々試してみるのがいいと思います。
流行になるとメディアや企業はなんでもかんでも筋膜リリースと名前をつけて取り上げたり、売り出したりするので確かなものを見極める目も必要になってきます。
医療や身体の常識は日々変わっていくので、
今の情報がすべて正解ではないと思っています。
筋膜の常識もこの先どんどん変わっていくことと思います。